人獣共通感染症

人獣共通感染症(農水省が使用する言葉):ここではこれを使用します。
動物由来感染症(厚労省が使用する言葉)・ヒトと動物の共通感染症
ズーノーシス(WHOが使用する世界共通の言葉)

  • 呼称が多いのは縦割り行政の弊害ですがどれも同じことを指しています。
  • WHOでは脊椎動物と人の間で自然に移行するすべての病気または感染と定義しています。(動物では病気にならない場合もあります)
  • 人獣共通感染症が問題となる背景:人の社会環境変化と行動の多様化。
  • ① 野生動物のペット化。
  • ② 人手不足による奥山・里山の荒廃化:奥山~里山~人里の区分がなくなってきたこと。
  • ③ アライグマの介在:元々は奥山で野生動物(クマ・イノシシ・鹿等)だけの感染症であったものが、アライグマ(元々日本には居らなかった移入動物)が、ウィルスに感染したマダニを奥山から里山や人里へ運んで来た。
  • ④ 交通手段のめざましい発達で、ペットも簡単に奥山まで乗り入れられるようになった。等々。
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飼育動物で特に問題となる人獣共通感染症

(以下の6種類は特に重要ですので少なくてもこれだけは覚えておいてください)

狂犬病

【ウィルス】(犬・猫・人・すべてのほ乳類)

「予防」の項目で詳しく記載しています。そちらをご覧ください。

重症熱性血小板減少症候群

(SFTS)【ウィルス】(犬・猫・人)

  • 人では2011年に中国で新しい感染症として流行していることが報告され、国内では2013年1月(2012年秋に死亡)に初めて確認された。
    日本では毎年60~90名前後の感染報告があります。
  • 犬と猫では2017年以降に報告された新しい感染症で年々増加している。
  • 元々は国内では野生動物(シカやイノシシ等)の感染症で、マダニを介して野生動物の間で伝搬していたが、最近は遺伝子解析で中国由来の可能性が高いと言われ出した。
  • そこにアライグマの介在が、飼育動物や人への感染の主原因であることが、最近明らかになった。
  • アライグマが感染したマダニをまき散らし、奥山~里山~人里の区分をなくした。
  • 犬が散歩をしている都会の草むらや公園にもマダニは潜んでいます。
  • 猫は自由に外出するため、草むらや公園でマダニに咬まれます。
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アライグマ

元々日本には居なかった移入動物(外来種)。
可愛い仕草で人気がありますが、獣医師の間では(気の)荒いクマと言われています。
アライグマはなつきませんので、飼育動物にはなり得ません。
下手に手出しすると“咬みちゃちゃく”にされます。そのため手に負えなくなってどこかに捨てて、遺棄しているのが現状です。

感染

  • 主に感染マダニに咬まれて(吸血)感染する。
  • 人へは発症した猫・犬に咬まれたり、その体液からも感染する。
  • 最近、人から人への感染が報告されている。
  • 犬は不顕性感染が多いですが、感染源にはなります。
  • 人も動物も的確な治療法がありません(対症療法だけです)。

死亡率

  • 人の致死率は6.3~30%(かなり高い)。高齢者は重篤化しやすい。
  • 猫の死亡率は約60%。(相当な高率)
  • 犬の死亡率:犬の多くは不顕性感染(感染していても症状が出ない)のため、報告頭数が少ないので死亡率は不明。

予防

レプトスピラ病

【細菌】(犬・人)

  • 7種混合ワクチンに入っています。
  • 5種混合が安いからと言って接種される方が多いですが、飼い主さんの身を守る為です。7種混合ワクチンを接種してください。

オウム病

【クラミジア】(鳥類・人)

  • 東南アジア産のセキセイインコが高率で感染しています。
  • 鳥は糞の状態が変化するのが多い。
  • 人はカゼ様の症状で、普通の治療では治らない。単にカゼと思って放置していると死亡することがある。

猫ひっかき病

【細菌】(猫・人)

原因

バルトネラ・ヘンセレという細菌による感染症。

症状

猫では無症状。
人が感染すると、受傷部の水疱、丘疹、発熱やリンパ節が腫れる。

予防

猫同士の感染を防ぐには、猫を外に出さない。
ノミが菌を運んでくることもあるので定期的なノミ予防をする。

特徴

猫は喧嘩による傷口から感染したり、ノミによって感染することがある。
人は、猫にひっかかれたり、咬まれたりすることで傷口から感染する。

【猫ひっかき病の治療】

猫も人も抗菌薬はあまり効果がない。
猫は無症状なので通常は受診がない。
人は通常は時間の経過とともに治っていきます。但し、免疫不全の人、高齢者では重篤になることがありますので要注意です。

サルモネラ症【細菌】

(カメ・人)

  • サルモネラは人の食中毒の代表的な菌です。
  • カメ等の爬虫類の50~90%がサルモネラ菌を保有している。
  • 国内では子供がミドリガメから感染して重症となった事例がある。

動物が体調不良の際には動物病院を受診してください。

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